支援会社向け2026/05/2910分で読める

施策提案から入るマーケ会社は、なぜじり貧になるのか

広告代理店出身でも大手企業出身でもなかったHappy Marketing代表・友貞ファラ洋輔に、大手企業と仕事をするために必要な視点を聞きました。

マーケティング支援施策提案大手企業診断インタビュー

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施策提案から入るマーケティング支援会社の限界を表す抽象キービジュアル
Visual: Generated for Makemani

大手企業と仕事をするには、何が必要なのか。

多くのマーケティング支援会社やフリーランスは、まず「経歴」や「人脈」を思い浮かべるかもしれない。大手広告代理店の出身であること。大手企業で働いた経験があること。業界内に強いコネクションがあること。有名企業との取引実績があること。最初から紹介で大きな案件が入ってくること。もちろん、そうしたものが有利に働く場面はある。

しかし、Happy Marketing代表の友貞ファラ洋輔は、そうした分かりやすい肩書きから始まったわけではない。広告代理店出身ではない。大手企業出身でもない。独立当初から、大企業との強いコネクションがあったわけでもない。誰もが知るような看板を背負っていたわけでもない。

それでも現在は、大手メーカー、大手メディア企業、上場企業、成長企業など、一定規模以上の企業と継続的に仕事をしている。

なぜ、それが可能だったのか。

友貞は、その理由を「広告提案が上手かったからではない」と話す。広告運用を売り込んだわけではない。SNS運用の専門家として入り込んだわけでもない。SEOやLP改善のノウハウだけで、大手企業との仕事を得てきたわけでもない。

やってきたのは、企業が整理できていないマーケティング課題を見えるようにすることだった。

多くのマーケティング支援会社は、「マーケティング支援」と言いながら、実際にはプロモーション施策を売っている。広告運用。SNS運用。SEO記事。LP制作。動画制作。LINE構築。インフルエンサー施策。MA運用。どれも必要な施策ではある。ただ、大手企業が本当に困っているのは、施策の不足だけではない。

何を優先すべきか分からない。誰に何を伝えるべきか整理されていない。営業とマーケティングがつながっていない。ブランドと販促が分断している。社内で合意形成できない。施策が増えすぎて、何が成果につながっているのか分からない。

つまり、プロモーションの前に、マーケティングが整理されていない。ここを見落としたまま施策提案から入ると、マーケティング支援会社は価格比較に巻き込まれる。広告なら手数料。記事なら一本単価。SNSなら投稿本数。動画なら制作本数。LPなら制作費。価値が作業単価に近づいていく。

では、肩書きもコネクションもない状態から、大手企業と仕事をするには何をすればいいのか。大手企業は、外部の支援者に何を求めているのか。なぜ「施策提案」から入るマーケティング支援会社は、じり貧になっていくのか。

Happy Marketing代表・友貞ファラ洋輔に聞いた。

肩書きよりも、本当に困っているところに入る

――大手企業と仕事をするには、広告代理店出身や大手企業出身であることが必要だと思われがちです。実際にはどう見ていますか。

友貞: 有利に働くことはあると思います。大手代理店出身であれば、大規模なプロモーションの進め方も分かっているでしょうし、大手企業の社内事情もある程度理解していると思います。大手企業出身であれば、稟議や社内調整、部門間の力学も分かる。

ただ、それがないと大手企業と仕事ができないかというと、私はそうではないと思っています。

私自身、広告代理店出身ではありませんし、大手企業出身でもありません。最初から大企業との太いコネクションがあったわけでもありません。

それでも仕事になってきたのは、大手企業が本当に困っているところに入ってきたからです。

多くの人は、大手企業との仕事というと、広告予算を取りに行くことだと考えます。広告代理店が入っているから、自分たちは入れない。そう見てしまう。

でも、広告代理店が入っていることと、その会社のマーケティング課題が解決していることは同じではありません。

広告代理店は、広告代理店として依頼されているケースが多い。つまり、プロモーションをやることがある程度決まった後に呼ばれていることが多いんです。

新商品を出す。キャンペーンを打つ。CMを作る。メディアに出稿する。SNSキャンペーンを行う。イベントを実施する。タレントを起用する。そうしたプロモーションを動かすうえで、大手広告代理店は強い。制作、メディア、キャスティング、進行管理、関係者調整をまとめて動かせるからです。

ただ、事業会社が本当に困っていることは、その前段階にあることが多いんです。

プロモーションの前段階にある問い

広告、SNS、SEOなどの施策カードの下にある上流課題を診断で見る
施策提案から入る前に、顧客理解、価値整理、営業接続、KPIなどの前段階を診断することで、作業単価の比較から抜け出しやすくなります。

――前段階というのは、どういうことでしょうか。

友貞: そもそも何をやるべきなのかが整理されていない、ということです。

誰に売るべきなのか。何を訴求すべきなのか。自社の価値は何なのか。営業とマーケティングはどうつながるべきなのか。ブランドと販促はどう接続するべきなのか。広告を増やす前に、導線や営業体制を直す必要があるのではないか。KPIは今のままでよいのか。社内で誰を巻き込むべきなのか。どの順番で進めるべきなのか。

こうした問いは、広告運用やSNS投稿だけでは解けません。

これはプロモーションの問題というより、マーケティングの問題です。

ここで言うマーケティングは、広告やSNSのことではありません。顧客を理解し、価値を定義し、伝え方を設計し、営業や組織の動きまで含めて、事業が前に進む状態をつくることです。

多くのマーケティング支援会社は、「マーケティング支援」と言いながら、実際にはプロモーションを売っています。広告運用、SNS運用、SEO記事、LP制作、動画制作、LINE構築、インフルエンサー施策、MA運用。もちろん、どれも必要です。

ただ、それらは多くの場合、「どう届けるか」の手段です。

事業会社が知りたいのは、その前にある「何を、誰に、なぜ、どの順番で届けるべきか」です。ここを見落としている会社は多いと思います。

広告代理店と同じ土俵で戦わない

――つまり、広告代理店と競争しているつもりでも、実際には見ている場所が違うということですか。

友貞: そうです。

多くの支援会社は、競合を広告代理店だと思っています。広告運用なら代理店より強い。SNSなら専門会社の方が速い。SEOならうちの方が成果を出せる。動画なら安く作れる。そう考えるのは自然です。

ただ、それはプロモーションの中での勝負です。

大手企業の事業レイヤーに入りたいなら、広告代理店と同じ土俵で戦うだけでは難しい。事業会社が抱えている課題は、広告だけではないからです。

売上が伸びない。新規事業が広がらない。営業が属人化している。ブランドが伝わらない。採用に効かない。投資家に説明しにくい。社内で方向性が揃わない。顧客の声が事業に反映されていない。

こうした課題は、広告の問題に見えて、実際には経営、組織、営業、ブランド、PR、IRとつながっています。

だから競合は広告代理店だけではありません。戦略コンサル、経営コンサル、DXコンサル、組織開発コンサル、PR会社、IR支援会社、CRMやSaaSベンダー、採用ブランディング会社も競合になります。

大手企業に入るというのは、広告予算を取りに行くことだけではありません。

企業課題を誰が正しく整理するのか。事業を前に進めるための論点を誰がつくれるのか。そこを見られています。

施策提案から入ると、価値が作業単価に近づく

――「施策提案から入ると、じり貧になる」という見方について教えてください。

友貞: 施策提案は分かりやすいんです。

広告を改善しましょう。SNSを強化しましょう。SEO記事を作りましょう。LPを直しましょう。動画を作りましょう。こうした提案は、発注側も比較しやすい。金額も見積もりやすい。成果指標も設定しやすい。

ただ、施策提案から入る限り、どうしても価格比較に巻き込まれます。

広告運用なら、手数料はいくらか。記事制作なら、一本いくらか。動画制作なら、何本作れるか。SNS運用なら、月何投稿か。LP制作なら、いくらで作れるか。

こうなると、提供価値は作業単価に近づいていきます。

さらに今は、AIやツールによって、作業の一部は確実に安くなっています。広告文のたたき台、記事構成、SNS投稿案、レポートの要約、LPのワイヤー案。以前なら人に頼んでいた作業の多くが、誰でもある程度作れるようになりました。

その中で施策そのものを売り続けると、差別化は難しくなります。

もちろん、実行力の高い会社は残ります。特定領域に強い専門会社も残ります。ただ、大手企業の経営や事業の中枢に入り込むには、施策を売るだけでは足りません。

大手企業が求めているのは、施策の数ではなく、事業を前に進めるための判断材料だからです。

大手企業が見ている問題の階層

――一見成功しているマーケティング支援会社でも、大手企業に入り込めていないケースは多いのでしょうか。

友貞: 多いと思います。

世の中には、成功しているように見えるマーケティング支援会社がたくさんあります。広告で売上を伸ばした。SNSでバズらせた。CVRを改善した。問い合わせを自動化した。年商数億円になった。クライアントの売上を何倍にした。こうした実績は素晴らしいものです。

ただ、その会社が大手企業の経営レイヤーや事業レイヤーに入り込めているかというと、必ずしもそうではありません。

理由は、見ている問題の階層が違うからです。

多くのマーケティング支援会社が見ているのは、CPA、ROAS、CVR、再生数、フォロワー数、リード数です。もちろん重要です。ただ、大手企業が見ているのは、その数字だけではありません。

事業戦略との整合性。ブランドとの整合性。既存事業との接続。営業部門との連携。社内説明責任。法務やガバナンス。IRや採用への波及。既存代理店や既存ベンダーとの役割分担。部門間の合意形成。

大手企業では、良い施策であっても、社内で成立しなければ動きません。成果が出そうでも、ブランドと合わなければ通りません。スピード感があっても、法務や広報が止めることもあります。マーケティング上は正しくても、営業現場が使えなければ意味がありません。

施策の良し悪しだけでは判断されないんです。

企業全体の中で成立するか。社内で説明できるか。関係部署を巻き込めるか。既存の文脈と矛盾しないか。実行後に判断できるか。そこまで含めて見られます。

この目線がないまま施策提案をしても、大手企業には刺さりません。

友貞が入ってきた「前段階」

――友貞さん自身は、どのように大手企業との仕事に入ってきたのでしょうか。

友貞: 私は広告代理店出身ではありません。

だから、広告代理店と同じ土俵で勝負してきたわけではありません。広告枠を売る。大規模キャンペーンを仕切る。タレントキャスティングを行う。巨大な制作チームを動かす。そうした領域で真正面から競争してきたわけではありません。

私が入ってきたのは、その前段階です。

事業課題をマーケティング課題に翻訳する。マーケティング課題を施策に落とす。施策を社内で実行できる状態にする。必要に応じて、広告、PR、SNS、コンテンツ、営業資料、イベント、IR、採用などに接続する。この領域です。

広告をどう出すかではなく、そもそも何が問題なのか。SNSをやるかどうかではなく、誰に何を伝えるべきなのか。LPを作るかどうかではなく、顧客が選ぶ理由は何なのか。コンテンツを作るかどうかではなく、その情報は営業や採用やPRにどう使えるのか。

ここを整理してきました。

大手企業は複雑です。関係者も多い。意思決定も長い。部署ごとに立場も違う。過去の経緯もある。既存の代理店やベンダーもいる。すでに動いている施策もある。

その中で必要なのは、派手なアイデアだけではありません。

今どこが詰まっているのか。何を動かせば前に進むのか。誰を巻き込む必要があるのか。どの順番で進めるべきなのか。これを整理することです。

最初に必要なのは、提案ではなく診断

――では、マーケティング支援会社は、最初に何をすべきなのでしょうか。

友貞: 最初に必要なのは、提案ではなく診断です。

多くの支援会社は、最初から提案します。広告をやりましょう。SNSを強化しましょう。SEOをやりましょう。LPを改善しましょう。動画を作りましょう。ただ、一定以上の規模の企業では、いきなり施策を提案しても噛み合わないことがあります。

なぜなら、相手はまだ「何をやるべきか」を決めきれていないからです。

広告の問題なのか。営業の問題なのか。商品価値の問題なのか。導線の問題なのか。ブランドの問題なのか。KPIの問題なのか。組織の問題なのか。それが整理されていない状態で施策を増やすと、マーケティングはどんどん複雑になります。

広告をやる。SNSをやる。SEOをやる。動画をやる。展示会をやる。メルマガをやる。ウェビナーをやる。外側の施策だけが増えていく。

しかし、中心にあるはずの顧客理解、提供価値、訴求、導線、営業接続、KPI、組織体制が整理されていない。これでは成果は安定しません。

だから最初に必要なのは、提案ではなく診断です。

どこが詰まっているのか。何を優先すべきなのか。何をやらないべきなのか。どの施策が今の事業課題に効くのか。どの施策はまだ早いのか。ここを見える化することが、マーケティング支援の入口になります。

診断は支援者自身の目線を変える

――診断は、支援会社にとってどのような意味を持つのでしょうか。

友貞: 診断の価値は、単にレポートを出すことではありません。

支援者自身の目線を変えることにあります。

自分が広告運用者であれば、広告を売りたくなります。SEO支援者であれば、記事を売りたくなります。SNS運用者であれば、SNSを提案したくなります。制作会社であれば、LPや動画を提案したくなります。それ自体は自然なことです。

しかし、クライアントの課題がそこにあるとは限りません。

診断を行うことで、自分の得意施策から考えるのではなく、企業の課題構造から考えられるようになります。

広告が効く状態なのか。SNSの前に訴求を整理すべきなのか。SEOより先に営業資料を整えるべきなのか。LPより先に商品価値を言語化すべきなのか。MAより先に顧客分類を見直すべきなのか。

これが説明できるようになると、施策提案の質が変わります。

自分の商品を売る人から、企業の課題を整理できる人に変わる。ここに、大手企業と仕事をするための入口があります。

プロモーションではなく、マーケティングを整理する

――最後に、大手企業と仕事をしたいマーケターや支援会社に伝えたいことはありますか。

友貞: 大手企業と仕事をするために、必ずしも広告代理店出身である必要はありません。大手広告代理店と同じことをする必要もありません。

必要なのは、プロモーションとマーケティングの差分を理解することです。

プロモーションは、決まった価値を届ける活動です。マーケティングは、誰にどんな価値を届けるべきかを整理し、事業が前に進む状態をつくる活動です。

多くの支援会社は、この差分を見落としています。だから、広告提案から入る。SNS提案から入る。SEO提案から入る。LP提案から入る。その結果、価格比較に巻き込まれ、作業単価で見られ、じり貧になっていく。

大手企業が求めているのは、施策を増やすことではありません。複雑な課題を整理し、社内で前に進められる状態をつくることです。

その入口にあるのが、診断です。

施策を提案する前に、まず診断する。売りたいものから考えるのではなく、相手の課題構造から考える。プロモーションを売るのではなく、マーケティングを整理する。

それができる人や会社は、広告代理店出身でなくても、大手企業と仕事ができます。

これからのマーケティング支援で価値が高くなるのは、施策をたくさん知っていることだけではありません。

企業がどこで止まっているのかを見抜き、前に進める状態まで整理できることです。

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