支援会社・フリーランス向け2026/05/2811分で読める

フリーランスWEBマーケターは、このまま「フリーター化」してしまうのか

広告運用、SNS運用、SEO、LP改善。施策代行だけで食べていくのが難しくなる理由を、市場構造と支援価値の変化から整理します。

フリーランスWEBマーケターマーケティング診断施策代行

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代行業化するWEBマーケターと診断への転換を表す抽象キービジュアル
Visual: Generated for Makemani

フリーランスという働き方は、この10年ほどでかなり一般化した。会社に所属せず、自分の専門性で仕事を受け、働く場所や時間をある程度自分で決められる。そうした働き方は、かつては一部の専門職やクリエイターのものだったが、いまではWEBマーケター、デザイナー、ライター、エンジニア、動画編集者など、さまざまな職種に広がっている。

実際、フリーランス市場は拡大している。ランサーズの「フリーランス実態調査 2024年」では、2024年のフリーランス人口は1,303万人、経済規模は20兆3,200億円とされている。一方で、同調査では生成AIの活用の遅れ、スキル習得、社会保障の未整備なども課題として挙げられている。つまり、フリーランスという働き方は広がったが、その中で安定して収益を伸ばせる人と、案件単位の不安定な働き方に寄っていく人との差も広がっている。

この変化を象徴するように、フリーランスから会社員へ戻る動きも報じられている。日経転職版の記事では、リクルートとパーソルキャリアにおける2024年4〜9月のフリーランスから会社員への転職仲介人数が、それぞれ5年前の約3倍に達したとされている。もちろん、会社員に戻ること自体は否定されるべきものではない。むしろ、キャリアの局面によっては合理的な選択でもある。ただ、この動きは、フリーランスという働き方が「自由」だけでは成立しにくくなっていることを示している。

問題は、フリーランスという働き方そのものではない。問題は、何を価値として売っているのかである。

専門性を売っているつもりでも、実際には作業時間を売っている。マーケティング支援をしているつもりでも、実際には広告運用、SNS投稿、SEO記事制作、LP修正といった施策単位の作業だけを請けている。そうなると、独立した専門職というより、案件ごとに呼ばれる便利な作業者に近づいていく。

ここでいう「フリーター化」とは、働き方や属性を揶揄する言葉ではない。自分で値付けしているように見えて、実際には発注側の都合で作業単価が決まり、案件が切れれば収入も止まる状態を指している。広告運用、SNS運用、SEO、LP改善といったWEBマーケティング領域でも、この構造はすでに見え始めている。

AIが奪っているのは、仕事そのものではなく作業の価格である

AIによってWEBマーケターの仕事がなくなる、と言い切るのは乱暴である。広告運用もSNS運用もSEOもLP改善も、企業にとっては依然として必要な仕事である。企業はこれからも新規顧客の獲得に悩み、採用に悩み、広告費の使い方に悩み、売上や粗利の伸び悩みに向き合い続ける。

ただし、AIによって変わるのは、仕事そのものの有無ではなく、作業の価格である。広告文のたたき台、SNS投稿案、SEO記事の構成、レポートの要約、改善案の候補といった作業は、以前であれば専門家に依頼する価値があった。しかし今では、AIを使えば一定水準の下書きはすぐに作れる。もちろん、それがそのまま成果につながるわけではないが、クライアントから見たときに「この部分はAIでもできるのではないか」と見なされる作業が増えたことは間違いない。

Brookingsのオンライン労働市場に関する分析でも、生成AIの影響を受けやすいフリーランス職種では、ChatGPT公開後に新規契約数や月間収入へ下押し圧力が生じたと整理されている。ここで注目すべきなのは、AIがいきなり職業全体を消すのではなく、まず作業単位の価格を押し下げるという点である。

広告運用者であれば、管理画面の調整、レポート作成、広告文の改善案が作業として見られやすい。SNS運用者であれば、投稿案、画像案、月次レポート、ハッシュタグ選定が作業として見られやすい。SEO支援者であれば、記事構成、キーワード調査、見出し案、本文の下書きが作業化しやすい。LP改善も同様で、ボタン文言、ファーストビュー案、構成案はAIやテンプレートで代替されやすくなっている。

こうなると、作業を売っている人ほど価格競争に巻き込まれる。一方で、課題を整理し、施策が成果につながらない理由を説明できる人にとっては、AIは競合ではなく道具になる。今後の差は、AIを使えるかどうかだけではなく、AIで代替される作業部分と、人間が担うべき課題整理部分を切り分けられるかどうかに出る。

広告市場は伸びている。それでも広告支援会社が苦しくなる理由

広告やマーケティングの市場そのものが縮んでいるわけではない。むしろ、広告市場は伸びている。電通の「2024年 日本の広告費」によれば、日本の総広告費は7兆6,730億円で過去最高となり、インターネット広告費も3兆6,517億円、前年比109.6%で過去最高を更新している。インターネット広告費は総広告費の47.6%を占め、広告市場の中心になりつつある。

ところが、市場が伸びているにもかかわらず、広告関連業の倒産は増えている。東京商工リサーチの記事では、2024年1〜4月の広告関連業の倒産は40件で、前年同期比37.9%増だったとされている。

ここには、一見すると矛盾がある。広告市場は伸びているのに、広告関連会社は苦しくなっている。これは、広告が不要になっているからではない。広告支援の中で、何に価値があるのかが変わっているからである。

かつては、広告運用の知識や媒体の操作経験そのものに価値があった。だが、広告プラットフォームの自動化が進み、AIによって広告文やクリエイティブ案の作成が容易になり、管理画面の操作やレポート作成だけでは差別化しにくくなった。大手企業であれば、広告運用の一部を社内で担うこともできる。外注するとしても、単なる運用者ではなく、事業課題や顧客理解、営業導線、KPI設計まで見てくれる相手を求めるようになる。

つまり、広告市場が伸びるほど、単純な運用代行は標準化されやすくなる。市場が伸びているから支援会社が安泰なのではなく、市場が成熟するほど、作業だけの支援は選ばれにくくなるのである。

求められにくくなるのは、マーケティング支援ではなく「商材としてのマーケティング支援」である

広告運用、SNS、SEO、LP制作などの作業が価格比較され、診断商品への導線が必要になる
施策だけを売ると価格比較に巻き込まれやすくなります。診断を入口にすると、作業ではなく課題整理と次の提案を商品化しやすくなります。

企業がマーケティングを必要としなくなるわけではない。むしろ、人口減少、採用難、広告費の上昇、競争環境の複雑化によって、企業にとってマーケティングの重要性は高まっている。問題は、企業が求めているものと、支援会社やフリーランスが売っているものの間にズレが生まれていることである。

SNS運用代行、広告運用代行、SEO記事制作、LINE構築、LP制作、インフルエンサー施策。これらはどれも、必要な場面では有効である。しかし、それが何の課題を解決するための施策なのかを説明できなければ、クライアントからは「また別の商材」に見える。

広告運用者は広告を提案する。SNS運用者はSNSを提案する。SEO支援者は記事制作を提案する。制作会社はLPを提案する。それ自体は自然である。自分が提供できるものを提案するのは、ビジネスとして当然だ。

しかし、クライアントの本当の課題がそこにない場合、提案はズレる。商品が選ばれにくい状態で広告を増やしても成果は出にくい。価格が市場や提供価値に合っていない状態でLPだけを直しても、受注率は大きく変わらない。営業が問い合わせを取りこぼしている状態でSEO記事を増やしても、商談や受注にはつながりにくい。ブランドの立ち位置が曖昧なままSNS投稿を増やしても、認知は広がっても選ばれる理由は残らない。

このとき、クライアントは本当の原因を正確に認識しているとは限らない。表面上は「広告を頼んだが成果が出なかった」「SNSをやっても売上につながらなかった」「SEO記事を書いたのに問い合わせが増えなかった」と見える。実際には、商品、価格、訴求、営業導線、社内体制、数値管理の問題かもしれないが、施策として受けた以上、その責任は支援者側に向きやすい。

ここに、フリーランスWEBマーケターや小規模支援会社が苦しくなる根本的な構造がある。施策だけを売ると、施策の外側にある課題まで背負わされる。しかし、施策の外側を見られなければ、その責任を説明することもできない。

マーケティングは情報商材屋になったのか

近年、マーケティング支援が「情報商材」のように見られる場面が増えている。もちろん、マーケティングそのものが怪しいという話ではない。問題は、特定の手法だけを切り出し、あたかもそれだけで成果が出るように売る支援のあり方である。

SNSで売上アップ、広告で自動集客、SEOで問い合わせ増、LINEで売上最大化、インフルエンサー施策で認知拡大。こうした言い方はわかりやすい。売りやすい。クライアントにも伝わりやすい。しかし、わかりやすく売れるものほど、別の会社や別のフリーランスも同じように売り始める。結果として、クライアントから見れば、どれも似たようなマーケティング商材に見えてしまう。

手法が悪いのではない。手法だけを売ることが問題なのである。企業が本当に知りたいのは、「SNSをやるべきか」「広告をやるべきか」「SEOをやるべきか」だけではない。自社の事業にとって、いま何が詰まっているのか、どこから直せば成果につながるのか、限られた予算と体制の中で何を優先すべきなのかを知りたいのである。

Happy Marketingでは、企業やブランドがマーケティング活動において中心部分を失い、広告、SEO、SNS、展示会、動画、MA、コンテンツなど外側の活動にばかり集中する状態を「マーケティングのドーナツ化現象」と整理している。中心となる価値やメッセージ、顧客理解、組織内の共有が曖昧なまま、外側の施策ばかりが増えていく状態である。

これは企業側だけの問題ではない。支援者側にも同じ構造がある。広告を売る、SNSを売る、SEOを売る、LPを売る。その商材がどの課題に効くのかを診断できないまま売ってしまえば、支援者自身もまた、ドーナツの外側だけを売る存在になってしまう。

広告の終焉ではない。広告だけで解決する時代の終焉である

「広告の終焉」という言い方は、事実としては正確ではない。広告市場は伸びており、企業にとって広告はこれからも重要な顧客接点であり続ける。終わりつつあるのは、広告だけで事業課題を解決できるという前提である。

広告は、顧客との接点を作る。しかし、商品が選ばれにくければクリックは成果にならない。価格が合っていなければ検討段階で離脱する。LPの訴求が弱ければ問い合わせにはつながらない。営業対応が遅ければリードは失注する。CRMがなければ見込み顧客を育てられない。KPIがCPAやクリック数だけであれば、売上や粗利との接続は見えない。

広告運用者がどれだけ丁寧に改善しても、広告の外側に原因がある場合、成果には限界がある。これは広告運用者の能力不足ではない。広告が成果を出すための周辺条件が整っていないということである。

広告を否定する必要はない。むしろ広告を孤立させないことが重要である。広告の価値を高めるには、広告の前後にある商品、価格、訴求、LP、営業、CRM、KPIまで見なければならない。

大手企業が求めているのは、施策屋ではなく整理できる人

大手企業や成長企業が求めるマーケティング支援も変わっている。広告運用ができる人、SNS投稿ができる人、SEO記事を書ける人は必要である。しかし、それだけでは十分ではない。

企業が本当に困っているのは、施策の不足だけではない。経営目標とマーケティング施策がつながっていない。営業とマーケティングの間で評価指標が違う。顧客理解が担当者の感覚に依存している。ブランドやパーパスが言語化されていない。複数の代理店や支援会社が入っているが、誰が全体を見ているのかわからない。こうした課題は、広告運用やSNS投稿の改善だけでは解決しにくい。

ここで求められているのは、単に施策を実行する人ではない。課題を整理し、関係者が同じ前提で話せる状態を作り、施策が機能する条件を整えられる人である。フリーランスや小規模支援会社にとっても、この視点は無関係ではない。大手企業だけでなく、中小企業でも、施策単体では成果が出にくい状況は増えているからである。

商材屋を脱却するには、まず診断が必要である

では、フリーランスWEBマーケターは、いきなり上流コンサルタントを名乗るべきなのか。そうではない。急に「経営戦略から見ます」と言っても、クライアントは戸惑う。「商品が弱いです」「価格がズレています」「営業対応に問題があります」と言えば、相手を責めているように聞こえることもある。

必要なのは、偉そうに指摘することではない。まず、見える化することである。

広告が悪いのか。商品が悪いのか。価格が合っていないのか。訴求が弱いのか。営業導線が詰まっているのか。KPIがズレているのか。社内体制が足りないのか。改善サイクルが回っていないのか。これを感覚ではなく、診断として整理する。

そうすると、会話が変わる。「広告の成果が悪いですね」ではなく、「広告の成果を止めている要因が、LPと営業導線にもありそうです」と言える。「SNSをもっと頑張りましょう」ではなく、「SNSで作った接点を問い合わせや指名検索につなげる導線が必要です」と言える。「SEO記事を増やしましょう」ではなく、「記事から商談につながる資料やフォロー導線が必要です」と言える。

これは、コンサルタントを気取ることではない。自分の支援が、どの課題に効くのかを説明するための前提である。

現在のマーケティング診断アプリは、Quick、Standard、Full、Full Plus、Projectという診断レベルを持ち、8カテゴリ、340設問、スコアリング、優先課題判定、PDFレポート出力まで設計されている。目的は、企業を採点することではなく、施策が成果につながらない理由をクライアントと話せる状態にすることである。

診断は、フリーランス自身の商品にもなる

診断は、クライアントのためだけのものではない。フリーランス自身の商品にもなる。

これまでは、広告運用費、SNS運用費、SEO記事制作費、LP改善費としてしか売れなかったかもしれない。しかし、その前に診断という入口を置くことができる。広告運用を売る前に、広告成果改善診断を売る。SNS運用を売る前に、SNS・導線診断を売る。SEO記事を売る前に、コンテンツ戦略診断を売る。LP制作を売る前に、CV導線診断を売る。インフルエンサー施策を売る前に、UGC・購買導線診断を売る。

いきなり月額費用を上げる必要はない。まず診断を提案し、課題を整理し、レポートを出す。そのうえで、必要な支援を提案する。この流れであれば、追加提案は押し売りになりにくい。クライアントにとっても、なぜその支援が必要なのかを理解しやすくなる。

自分で対応できる領域は、自分のサービスとして提案すればよい。一方で、自分だけでは対応しきれない上流設計や組織課題については、Happy Marketingの監修や共同支援につなげることもできる。診断とは、分析のためだけにあるのではない。フリーランスや小規模マーケターが、自分の提供価値を組み替えるための入口にもなる。

まずは、既存顧客1社で考えてみる

フリーランスとして続けるのが難しくなったと感じているなら、まず考えるべきは、作業量を増やすことではなく、売るものを見直すことかもしれない。広告運用、SNS運用、SEO記事制作、LP改善を売り続けるだけでは、どうしても価格競争に巻き込まれやすい。AIや自動化によって作業の一部が代替されるほど、その傾向は強まる。

一方で、クライアントの課題を整理し、施策が成果につながらない理由を可視化し、次に何を直すべきかを示せるなら、支援者としての立ち位置は変わる。診断は、クライアントのためだけのものではない。自分自身が、作業者から抜け出すための商品にもなる。

もし、いま既存顧客の中に、広告は回しているのに成果が伸びない、SNSは続けているのに売上につながらない、LPを改善しても問い合わせ後で止まっている、SEO記事を作っても商談や受注につながっていない、そういう会社があるなら、一度その状況を整理してみてもよい。

Happy Marketingでは、既存顧客1社を想定して、この診断をどう提案できるか、診断後に自分のサービスへどうつなげられるかを一緒に整理している。作業を増やす前に、問いを変える。そのための入口として、まずは既存顧客での使い方を相談してほしい。

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