税理士・会計事務所が広告宣伝費を整理するときの視点
広告宣伝費や販促費を、削る費用、続ける費用、判断できない費用に分ける考え方を整理します。税理士・会計事務所が顧問先と話すときの確認項目も紹介します。

「削る費用」「続ける費用」「判断できない費用」を分ける考え方
広告宣伝費や販促費は、金額だけを見ても良し悪しを判断しにくい費目です。
売上につながっている費用もあれば、惰性で続いている費用もあります。一方で、現時点では成果を判断する材料が足りない費用もあります。
そのため、税理士や会計事務所が顧問先と広告宣伝費について話すときは、単に「高い」「削るべき」と見るのではなく、その費用が何のために使われているのかを整理することが重要です。
広告宣伝費は、単なるコストではありません。ただし、すべてが投資とも限りません。
まずは、費用の意味を分けて考える必要があります。
広告宣伝費は3つに分けて考える

広告宣伝費や販促費を見直すときは、最初から「削るか、続けるか」を決めようとしないほうがよいです。
まずは、次の3つに分類します。
続けるべき費用
目的が明確で、成果を確認できている費用です。
たとえば、問い合わせ獲得、既存顧客への再提案、採用応募、認知拡大など、何を目的にしているかが説明できるものです。
さらに、成果指標が設定されており、定期的に改善されている場合は、単なる支出ではなく、事業成長のための投資として考えやすくなります。
削るべき費用
目的が曖昧なまま続いている費用です。
- 昔から出しているから
- 付き合いで続けているから
- なんとなく必要そうだから
このような理由だけで継続している広告や販促施策は、見直しの対象になります。
もちろん、すぐに停止すべきとは限りません。ただし、目的や成果を説明できない費用は、優先的に確認する必要があります。
現時点では判断できない費用
実は、最も多いのがこの分類です。
広告を出している。チラシを配っている。SNSを運用している。SEO記事を作っている。展示会に出ている。
しかし、それが何につながっているのか、社内で整理されていない。
この場合、広告そのものが良いか悪いかを判断する前に、判断材料をそろえる必要があります。
「判断できない費用」が多い会社で起きていること
広告宣伝費や販促費を整理すると、多くの会社で「判断できない費用」が出てきます。
これは、必ずしも無駄遣いという意味ではありません。
問題は、広告や販促の中身ではなく、次のような点が整理されていないことにあります。
- 何のために使っているのか
- 誰に届けたいのか
- どの問い合わせや購入につなげたいのか
- 何を成果として見るのか
- いつ、どの基準で継続判断するのか
つまり、費用の問題というよりも、目的・導線・KPI・改善運用の問題です。
広告宣伝費を削るかどうかは、その後に考えるべきです。
目的も成果指標もないまま「広告費が高い」と判断してしまうと、本来は続けるべき費用まで削ってしまう可能性があります。
逆に、成果が出ていない費用を「必要経費」として残し続けてしまうこともあります。
税理士・会計事務所が確認したい5つの問い
税理士や会計事務所が、顧問先の広告宣伝費・販促費を整理するときは、専門的なマーケティング判断まで踏み込む必要はありません。
まずは、次の5つを確認するだけでも、費用の見え方は大きく変わります。
この費用は何のために使っていますか?
認知を広げるためなのか。問い合わせを増やすためなのか。既存顧客に再提案するためなのか。採用のためなのか。
目的が違えば、見るべき成果も変わります。
誰に届けるための費用ですか?
広告や販促は、届ける相手が曖昧なままだと成果を判断しにくくなります。
新規顧客向けなのか。既存顧客向けなのか。休眠顧客向けなのか。採用候補者向けなのか。
対象が整理されると、その費用の役割も見えやすくなります。
どの行動につなげたい費用ですか?
広告を見た人に、何をしてほしいのかを確認します。
問い合わせしてほしいのか。資料請求してほしいのか。来店してほしいのか。予約してほしいのか。営業担当に相談してほしいのか。
ここが曖昧だと、広告の成果を判断できません。
成果を何で見ていますか?
広告宣伝費の成果は、売上だけで判断できるとは限りません。
問い合わせ数、商談数、来店数、資料請求数、採用応募数、既存顧客からの反応など、目的に応じた指標が必要です。
一方で、クリック数や表示回数だけを見ていても、経営判断にはつながりにくい場合があります。
継続・停止の基準はありますか?
広告宣伝費を整理するうえで重要なのは、あらかじめ判断基準を持つことです。
どの期間で見るのか。どの数値を見て判断するのか。どの状態なら改善するのか。どの状態なら停止するのか。
この基準がないと、広告費は「なんとなく続ける費用」になってしまいます。
「マーケティング診断」ではなく「使途整理」として見せる
会計事務所が顧問先に提案する場合、「マーケティング診断」という言葉を前面に出すと、少し距離を感じられることがあります。
顧問先によっては、広告代理店やコンサルティングの提案のように受け取るかもしれません。
そのため、会計事務所向けには、次のように伝えるほうが自然です。
- 広告宣伝費・販促費の使途整理
- 販促費の継続判断に必要な情報整理
- 広告費を削る前の確認項目整理
- 売上につながる費用かどうかを見直すための整理
この見せ方であれば、広告を増やす話ではなく、費用の意味を見直す話として受け止められます。
顧問先にとっても、会計事務所からの提案として違和感がありません。
会計事務所が担えるのは、広告運用ではなく判断材料の整理
税理士や会計事務所が、広告運用の専門家になる必要はありません。
重要なのは、顧問先が費用を判断できる状態をつくることです。
たとえば、広告費が増えている会社に対して、いきなり「削りましょう」と言うのではなく、次のように整理します。
- この費用は何を目的にしていますか
- 成果はどの数字で確認していますか
- 問い合わせや売上までの流れは見えていますか
- 続けるかどうかの判断基準はありますか
この問いを通じて、広告宣伝費は単なる支出ではなく、経営判断のテーマになります。
そして、判断材料が不足している費用については、次回以降の確認事項として整理できます。
次回ミーティングで確認したいこと
広告宣伝費や販促費を見直す際には、次回ミーティングで次の項目を確認すると整理しやすくなります。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 費用の内容 | 何に使っている費用か |
| 目的 | 認知、問い合わせ、来店、採用、既存顧客対応など |
| 対象 | 誰に向けた施策か |
| 導線 | 広告や販促の後に、どの行動へつなげているか |
| 成果指標 | 何の数字で効果を見ているか |
| 改善状況 | 出しっぱなしになっていないか |
| 判断基準 | 継続・改善・停止をどう決めるか |
ここまで整理できると、広告宣伝費の話は単なるコスト削減ではなくなります。
「何を削るか」ではなく、「どの費用を残し、どの費用を見直し、どの費用は判断材料をそろえるか」という話になります。
広告宣伝費の整理は、顧問先の経営判断を支える
広告宣伝費や販促費は、削れば利益が残るように見える費目です。
しかし、売上につながっている費用まで削ってしまえば、将来の売上機会を失う可能性があります。
一方で、目的も成果も曖昧な費用を続けていれば、利益を圧迫します。
だからこそ、税理士や会計事務所が顧問先と向き合うときには、広告宣伝費を「多い・少ない」だけで見るのではなく、使途と判断材料を整理することが重要です。
広告宣伝費は、削る費用、続ける費用、判断できない費用に分ける。
そして、判断できない費用については、目的、導線、KPI、改善運用を確認する。
この整理ができると、顧問先との会話は、単なる経費削減ではなく、売上につながる投資判断に近づいていきます。
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